中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ

計画研究C02:パレオゲノミクス解析プラットフォーム開発とその応用

ゲノム情報から中国新石器時代の文化的ハイブリディティ過程と
ウェスタン・インパクトの実態を可視化する

覚張 隆史  
(金沢大学・助教)  

 古代中国内外との文化的ハイブリディティ形成過程において、社会の最小単位である個人が他地域文明の個人とどの様に接触し、その交流が各地域文化内でどの様に社会的に受容されていたか、その実態は未だ不明な点が多いです。また、中央アジアなど西方からの古代中国への文化的インパクトが生じる過程では、もともと中国にはいなかった家畜(ウマ・ウシ・ヒツジなど)や野生種がヒトの移動に伴って持ち込まれ、これに伴いヒトの眼には見えない微生物(病原菌・寄生虫など)も併せて侵入してきたと考えられます。これら多様な生物群がどの地域を起源として、どのルートを介してもたらされていたか、未だその実態を示す直接的な証拠は得られていません。
 遺跡から出土する生物遺体から直接的に遺伝情報を抽出・比較する古代DNA分析が世界中で精力的に進められています。近年では次世代シーケンサーを用いた膨大なDNA配列(ゲノム情報)の解析によって、各地域間における混血の検出などが可能になってきています。本計画研究では、大規模な古代ゲノムデータ解析を可能とする専用プラットフォームを構築することで、①古人骨と現代人の再解析からみたヒトの動態(中国新石器時代における遺跡間の混血、およびキルギスなどの中央アジアからの混血の評価)、②家畜からみた「モノ」の動態(中央アジアのヤギ・ヒツジ・ウマなどのゲノムデータの比較)、③ヒトに寄生する動物・病原菌からみたヒトの動態(野生動物や歯周病菌など)を遺伝学的に評価し、古代中国文明形成期における中国内外のハイブリディティの可視化を試みます。

            

研究組織

  氏名 所属
研究代表者 覚張隆史 金沢大学助教
研究分担者 石谷孔司 産業技術総合研究所研究員
中込滋樹 金沢大学客員研究員
和久大介 東京農業大学助教
澤藤りかい 日本学術振興会特別研究員(CPD)(総合研究大学院大学)
海外研究協力者 趙 欣 中国社会科学院考古研究所副研究員
Choongwon Jeong ソウル大学准教授
Ludovic Orlando  トゥールーズ第3大学教授
Daniel Bradley ダブリン大学教授
Martin Sikora コペンハーゲン大学准教授

C02班の業績はこちら