中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ

計画研究A02:考古遺物の材料分析と産地推定

権力の象徴はどこで生み出され伝播したのか?
多彩な威信材の材料とモノづくり技術を通して、交流や社会構造の変容に迫る

神谷 嘉美  
(金沢大学・助教)  

 漆器、辰砂、玉器、石器、特殊土器(彩陶、白陶、黒陶などの精製土器類)といった “エリート層の権威の象徴”として定義される威信材は「どこ」に由来する「なに」を用いて「どう」つくられ、特定の地域を超えて伝播したのでしょうか?私たちの研究班では、中国文明形成期のモノとヒトの移動の問題に対して、文明を支えた最も重要な威信材の材料分析を通した生産地の推定を試み、古代中国のモノづくりにおける資源の活用の実態と、モノや技術の移動の解明に取り組みます。
 具体的には①用いられた材質分析による漆器の塗装工程復元、②水銀朱の産地推定による流通経路の検証、③玉・トルコ石などの装身具材料や石器の識別と用途との再構築、④土器の胎土分析による原材料と地質環境の関連性の解明、⑤残存デンプン粒分析による植物利用の動態の解明、という5つの研究を実施します。⑤は威信材の動態復元のための検討材料を補強するため、漆以外の植物利用として柱のひとつにしています。加工・調理に用いられた土器や石器、祭祀具である青銅器の表面に残る微細な植物のデンプン粒分析を行うことで「食物としての植物」と「儀礼で用いられた植物の役割」の識別、それらの地域的特性を検証するものです。
 本計画研究は、有機・無機を問わず各種の威信材に対して分析化学、鉱物学、地球化学、植物学などの手法を組み合わせ、土器や青銅器といった個別の議論にとどまってきた従来の中国威信材研究を新たな次元へ引き上げるような「統合型の物質研究」に取り組みます。モノやヒトの交流や社会構造の変容を解き明かして、文字のない時代の組織進化の実態に迫るものです。特定の分野に偏らない威信材を多角的に検証することで、古代中国において原材料がどのように活かされ、技術開発やその伝播に繋がっていったのか、モノづくりの時空間動態の解明ができると期待されます。

研究組織

  氏名 所属
研究代表者 神谷嘉美 金沢大学助教
研究分担者 飯塚義之 金沢大学客員研究員
渋谷綾子 東京大学史料編纂所特任助教
南 武志 奈良県立医科大学博士研究員
石田智子 鹿児島大学准教授
海外研究協力者 張 飛龍 中国西安生漆研究所副所長
Nicolas Zorzin 国立成功大学助教