中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ

計画研究B02:植物考古学から探るイネ、雑穀、ムギ食文化の交流と変容

異なる主穀に根差した食文化の邂逅は、文明に何をもたらしたか。

庄田 慎矢  
(国立文化財機構 奈良文化財研究所・国際遺跡研究室長)  

 計画研究B02班では、考古生化学、レプリカ・顕微鏡法、民族植物学の三本の柱によって、様々な地域に由来する多様な食文化の融合が、中国文明の形成に果たした役割を明らかにすることを目指します。近年の考古学的・考古科学的調査の進展により、ユーラシア大陸の東部では、新石器時代から青銅器時代にかけて、長江流域~華南を中心とするイネ、中国東北部~華北を中心とするアワ・キビ、中央アジアを中心とするムギ食文化圏が次第に接近し、相互交流を経てそれぞれ変容していく様子が次第に明らかになりつつあります。これらの穀物を中心とした各種食材の消費や調理に関する地域ごと・時期ごとの具体的な様相を、従来の考古学的な検討に加えて、植物遺存体や土器圧痕、そして土器胎土・歯石・炭化物などに残る生体分子の複眼的な分析を通じて明らかにすると同時に、民族植物学的知識や文献史料の解釈を援用して解釈を実地に即したものとします。
 調査対象となるのは、中国や中央アジアの各遺跡から出土する植物そのものの遺存体や、土器表面の植物圧痕、肉眼では内容物が識別不可能な炭化有機物、土器胎土や歯石などに残されている脂質タンパク質、DNAなどの生体分子、そして現代のイネ・ムギ・雑穀農耕文化圏における植物を中心とする資源の利用法です。
本領域が目指す中国文明の形成過程の解明については、中国はもちろんのこと、日本や欧米圏においても長い研究の歴史があります。しかし、議論の地理的な対象に中央アジア・北アジアを本格的に取り込むこと、そして方法論として近年急速に発展した、生体分子を対象とする考古生化学の最新の研究方法をふんだんに盛り込むことは、世界でも例をみない新たな試みと言えます。

研究組織

  氏名 所属
研究代表者 庄田慎矢 奈良文化財研究所国際遺跡研究室長
研究分担者 西内 巧 金沢大学准教授
熊谷真彦 農業・食品産業技術総合研究機構研究員
遠藤英子 明治大学研究推進員
竹井恵美子 大阪学院大学教授
村上夏希 奈良文化財研究所アソシエイトフェロー
海外研究協力者 Giedre Motuzaite ヴィリニュス大学生物考古学センター長
Robert Spengler マックス・プランク人類史科学研究所古民族植物学研究室長
Paula Dupuy ナザルバエフ大学文化人類学科准教授
Dmitriy Voyakin 国際中央アジア学研究所長
Oliver Craig ヨーク大学考古生化学研究所長
馬 頴 北京科学技術大学准教授
孫晙鎬 高麗大学校准教授