計画研究 B01:動物考古学から探るユーラシア家畜文化のダイナミズム
新たなユーラシア家畜文化史の提言を目指して |
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菊地 大樹 (金沢大学・客員研究員) |
礼法・礼式の規範である「礼制」は、今日、国家から個人の行動様式に至るまで、私たちを取りまく社会の秩序や制度のなかに深く浸透しています。古代東アジア世界を形成する求心的な要素として作用していた礼制は、中国文明が成立するなかで、中核的な役割を担うようになります。
この礼制を維持するために、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ニワトリを代表とした六畜を犠牲とする祭儀システムが要となって機能していました。こうした家畜・家禽の供犠を礎とする祭儀システムの確立は、紀元前3千年紀後半から紀元前2千年紀前半の新石器時代後期における中央アジア由来の牧畜文化の受容が引き金となり、中国各地で勃興していた新石器時代文化の諸要素が黄河中流域へと集約していく過程で達成されます。
本研究では、中央アジアで成立した牧畜文化の受容と中国文明の形成に作用した中国新石器時代後期の諸文化要素の融合に注目し、この二つの大きな歴史動態を遺跡から出土する動物骨の実践的な動物考古学的研究から導き出します。そして、外来の牧畜文化の受容が引き金となり成立した中国独自の牧畜文化が、中国文明が形成されるなかでどのような役割を果たしたか、周辺世界へと波及・拡大するなかで、種の選択や文化的意味付けの転換などが起こる意義を明らかにします。
このように、中国文明で展開した独自の牧畜文化を受容、発展から波及という一連のプロセスで検討することで、従来の東西交流史や家畜文化史研究に新視角を提供する新たなユーラシア家畜文化史のシナリオの提示を目指します。
研究組織
氏名 | 所属 | |
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研究代表者 | 菊地大樹 | 金沢大学客員研究員 |
研究分担者 | 江田真毅 | 北海道大学准教授 |
丸山真史 | 東海大学准教授 | |
新井才二 | 東京大学文学部考古学研究室助教 | |
海外研究協力者 | 袁 靖 | 中国社会科学院考古研究所研究員/復旦大学教授 |
羅運兵 | 湖北省文物考古研究所副所長 | |
李志鵬 | 中国社会科学院考古研究所研究員 | |
呂 鵬 | 中国社会科学院考古研究所研究員 | |
王春雪 | 吉林大学准教授 |
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