中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ

計画研究C01:同位体比分析から見たヒトとモノの動態復元

中国の初期青銅器時代における都市の成立を同位体比から記述する

米田 穣  
(東京大学・教授)  

 ヒト・モノが集まることで情報が融合する「都市」は、文明の考古学的な表象のひとつといえます。これまで文明の誕生は、巨大な囲壁や宮殿、工房、貴族墓などの存在から示される都市の同定を中心に議論されてきました。ところが、長江下流域の新石器時代晩期の良渚遺跡群で実施した古人骨の同位体分析によって、我々は遠方出身の他所者の存在が新たな都市の目印となる可能性を見いだしています。計画研究C01では、新石器時代晩期の中国各地に、考古学文化圏をこえて他所者を引き寄せる都市が広く存在したのか、またエリート・非エリートの文化圏をこえた交流があったのか、古人骨と土器、象牙製品などの同位体分析(酸素、炭素、ストロンチウム、ネオジム、鉛)、感染症などの古病理学を用いて検討します。具体的には、古人骨とくに殉死や頭骨集積など特異な状況から出土した個体や散乱人骨を中心に歯エナメル質の酸素とストロンチウム同位体比から、出身地を推定していきます。散乱人骨では性別や年齢、埋葬に反映する社会的背景が分からないので、従来の研究では注目されませんでしたが、本研究では最新のプロテオーム(全タンパク質)分析で性別などの情報を付加し、詳細な骨学的・古病理学的観察から個体の背景を最大限解読することで、資料価値を高めます。また庶民の墓で人骨と副葬品の土器でストロンチウム同位体比を比較することで、物質文化研究では見えなかったヒトとモノの動態を検証します。領域全体に対してC01班は、考古学文化圏を越えた「都市と都市」あるいは「都市と周縁」の関係を同位体指標で記述することで、中国文明の形成にヒト・モノ・情報の動態が果たした役割、ハイブリディティの高まりが文明を生み出したメカニズムに関する実証的データを提供する計画です。

研究組織

  氏名 所属
研究代表者 米田 穣 東京大学教授
研究分担者 澤田純明 新潟医療福祉大学准教授
岡崎健治 鳥取大学助教
石丸恵利子 広島大学研究員
蔦谷 匠 総合研究大学院大学助教
海外研究協力者 胡 耀武 復旦大学教授
郭 怡 浙江大学准教授
余 翀 中山大学准教授