中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ

計画研究A01:威信材の生産と流通

玉器、トルコ石、タカラガイなどの威信財はどこで生産され、

どのように地域間でやりとりされたのか?

 

中村  慎一  
(金沢大学・教授)  

 紀元前3千年紀後半の中国では、各地に地方文明が林立する状況が現出しました。竜山(山東省)、陶寺(山西省)、石峁(陝西省)、斉家(甘粛省)、後石家河(湖北省)などがそれです(カッコ内は主な分布地域)。この時期、地方文明(=考古学的文化)の枠を遥かに超えて、中国の広い範囲に分布する器物が出現するようになります。玉器、トルコ石、ワニ革太鼓、タカラガイ、漆器、象牙、特殊土器(多彩色土器、白陶など)、水銀朱などで、いずれも二里頭文化以降の青銅器文明に継承されます。
 これらの器物はいわゆる厚葬墓に納められるのが通例で、エリート層の所有物であったと見なされます。現代社会でロレックスの腕時計やエルメスのバッグが民族、宗教、社会体制の違いを超えて世界中でもてはやされるのと類似した現象であると言えます。考古学的文化の違いを超えてエリート層の権威の象徴物=威信財が共有されるというこの現象こそが、中国文明形成前夜の文化的・社会的状況を特徴づけています。
 これらの威信財は中国各地でほぼ同時に出現するため、各器物の本来の起源地がどこであり、拡散の方向がどちら向きなのかが分かりづらいという大きな問題があります。この問題の解決を通じて、各地方文明が中国文明形成に果たした役割が鮮明になると我々は考えています。
 威信財遺物の網羅的集成と綿密な観察にもとづき、その時間的・空間的広がりの把握(=編年)を通じて、各器物の本来の起源地がどこであり、拡散の方向がどちら向きなのかを明らかにしていくことが本計画研究に課されたミッションです。また、それらが最終的に初期青銅器時代の二里頭文化へと収斂していく過程を跡付けていきます。さらに、西方からの中国への文明要素の流入について、中央アジアでの遺跡調査を通じてその蓋然性を評価し、文明形成におけるハイブリディティについて汎ユーラシア的視点から解明を進めます。

               

研究組織

  氏名 所属
研究代表者 中村慎一 金沢大学教授
研究分担者 村上由美子 京都大学准教授
久米正吾 金沢大学特任助教
久保田慎二 熊本大学准教授
角道亮介 駒澤大学准教授
本多貴之 明治大学准教授
海外研究協力者 秦 嶺 北京大学准教授
秦小麗 復旦大学教授
許 宏 中国社会科学院考古研究所研究員
劉 斌 浙江大学教授
孫周勇 陝西省考古研究院院長

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