中国文明起源解明の新・考古学イニシアティブ

金沢大学 古代文明・文化資源学フォーラム 2025「いにしえの世界を探る」のお知らせ

日時:2025年7月26日(土)11:00~16:40(10:40開場)
会場:石川県文教会館 4階 401・402会議室(大会議室)(石川県金沢市尾山町10-5)
主催:金沢大学 古代文明・文化資源学研究所
参加方法:事前申込不要(先着順100名)。対面形式のみ
詳しくは:https://isac.w3.kanazawa-u.ac.jp/event/event20250726
プログラム
11:00~11:05 開会挨拶 中村 慎一(金沢大学古代文明・文化資源学研究所 所長)
11:05~11:40 報告① 小嶋 芳孝(金沢大学古代文明・文化資源学研究所 客員教授)
高句麗・渤海史像の再構築に向けて ―渤海日本道を歩く
渤海(698~926年)は中国東北地方・朝鮮半島北部・ロシア沿海地方南部を領域とし、王都の上京は現在の中国黒竜江省牡丹江市に置かれました。上京と唐や新羅・契丹を結ぶ道が整備され、日本に向かう道は日本道と呼ばれていました。日本道は上京からクラスキノ城跡(ロシア沿海地方)を経て海を渡り、出羽や加賀(金沢)・出雲に上陸して平城京や平安京に至るルートでした。本報告では渤海領内の日本道と、クラスキノ城跡の調査成果を紹介します。
11:40~12:15 報告② 中村 慎一(金沢大学 理事・副学長)
交雑する文明 ―中国文明起源論の新地平
新石器時代晩期の中国では各地に地方文明が割拠し、その間で各種の威信財がやりとりされました。それと同じ時期、ムギやウマ、ウシ、ヒツジ、そして青銅器や馬車が西方から導入されます。やがて、それまで地方文明の空白地帯であった河南省に中国文明としての二里頭文化が誕生します。それは辺境が中心に転化する過程と言い換えることもできます。中国古代文明の形成過程を“ハイブリディティ”をキーワードに捉えなおします。
12:15~13:30 休憩
13:30~14:05 報告③ 松永 篤知(金沢大学資料館 特任助教)
考古学研究者がみたタイ北部山地民の暮らし ―過去の生活復元の手がかりとして
考古学とは、発掘調査によって得られた物的証拠に基づき過去の人びとの営みを明らかにする学問です。しかし、静的なモノからの復元には限界があります。それを補い動的なイメージを描き出す方法の一つが、民族考古学です。伝統的な暮らしを続ける人びとの暮らしを観察・記録し、それを生活復元に活かすのです。本報告では、北陸出身の日本考古学研究者が実際にみたタイ北部山地民の暮らしを、民族考古学的視点から紹介します。
14:05~14:40 報告④ 小髙 敬寛(金沢大学国際基幹教育院 准教授)
メソポタミア文明の源流をたどる ―イラク・クルディスタン地域の先史遺跡調査
 史上初めて、生活の糧を農耕や牧畜に頼る暮らしを始めた「肥沃な三日月地帯」の人びとは、やがてメソポタミア低地へと進出し、最古の文明誕生の舞台を整えました。金沢大学をはじめ筑波大学・慶應義塾大学・北海道大学などからなる研究チームは、そのプロセスの追跡を目指して、ティグリス河の支流域で遺跡調査に取り組んでいます。本報告では、昨年実施したシャカル・テペ遺跡の第3次発掘調査を中心に、現場から得られた成果を紹介します。
14:40~15:15 報告⑤ 覺張 隆史(金沢大学古代文明・文化資源学研究所 准教授)
パレオゲノミクスによる人類集団の起源研究 ―日本から中米まで
古代文明を形成してきた世界各地の人類集団の起源を探究することは、金沢大学古代文明・文化資源学研究所が挑んでいる重要な研究課題の一つです。パレオゲノミクス研究室は、この課題の解決に向けて、日本、モンゴル、ホンジュラス、エジプトなどで遺跡出土人骨のゲノム解析プロジェクトを進めています。本報告では、これまでのパレオゲノミクスによる人類集団の起源研究の進捗状況を紹介します。
15:15~15:25 休憩
15:25~16:00 報告⑥ 足立 拓朗(金沢大学古代文明・文化資源学研究所 教授)
令和6年能登半島地震・奥能登豪雨の被災文化財 ―三次元測量の取り組み
昨年の相次いだ災害により能登地方の文化財の多くが被災し、特に神社・仏閣、古民家、石塔などが倒壊しました。すべての被災文化財を修復することは困難であり、半壊の状態で残しておくことは危険であるため、多くの歴史的な建造物が公費解体される見通しです。研究所は解体が予定されている被災文化財の三次元測量を実施してきました。今後は三次元測量データの効果的な公開方法を研究していく予定です。本報告では、現時点の取り組みについて紹介します。
16:00~16:35 報告⑦ 佐々木 由香(金沢大学古代文明・文化資源学研究所 特任准教授)・能城 修一(明治大学黒耀石研究センター 客員研究員)
弥生時代の木材からみた植物利用 ―小松市白江梯川遺跡を中心に
南加賀などの北陸地方では、低地の河川沿いに弥生時代の集落が形成され、河川などを利用して運搬された大量の木材などが良好な状態で出土します。樹種同定という方法で木材の種類を調べた結果、弥生時代当時の低地にはスギ林が広がり、スギを中心とした木材資源を用いて、さまざまな木製品などの植物性遺物が作られたことが明らかになっています。本報告では、近年報告された小松市白江梯川遺跡を中心に、当時の植物資源利用を検討します。
16:35~16:40 閉会挨拶 足立 拓朗(金沢大学古代文明・文化資源学研究所 副所長)